自分の仕事は、自分でつくる

明日の仕事のヒントと、行動力の高め方

「筆の置きどころ」を知る

今日は島根県松江市の伝統工芸品、八雲塗の職人(絵師)さんの撮影に行ってきました。
インタビューをさせていただいたのは、同じく絵師であるお父さんから屋号を継ぎ、あと数年で還暦を迎えるベテラン。そのひとつの集大成として「八雲びいどろ」というガラス漆器もつくられている素敵な職人さんでした。

 

今日はそのインタビューの中で、僕を初心に戻してくれたひと言をご紹介したいと思います。

 

「筆の置きどころを知る」

 

職人さんがある日、師匠であるお父さんと同じ絵柄の下絵を書いていたときのこと。職人さんが丁寧に描いていたのとは正反対に、お父さんはこだわって描いているようには見えず、むしろ手を抜いているようにさえ見えたそうです。

 

でも、実際に書き上がった絵を見比べてみると、お父さんのほうが立体的で躍動感があった。一方、自分が描いた絵は平面的で、情緒も感じられなかった…。
あんなに丁寧に描いていたのに、なぜ? と理解ができなかったようですが、今はその理由がハッキリとわかったとおっしゃっていました。

 

そう、それが「筆の置きどころ」。
筆の置きどころがわからず、とにかく描いて描いて描いて、結果的にこねくり回していた。絵は必要以上に描き、こねくり回しすぎると、どんどん悪くなっていくと気づいたそうです。

 

その話を聞いたとき、コピーライターの師匠に言われたことを思い出しました。
「文章はこねくり回しすぎると、どんどん悪くなっていく」と、まだ20代だった僕は教えてもらったのです。

 

すべての仕事には、ちょうどいい場所がある。時間をかければかけるほどいいわけではない。むしろ、どんどん悪くなっていく…。
初心に戻してくれた職人さんのひと言に、今日は感謝です。