伝統工芸に関わる人、または関わりたいと考えている人たちと話をしていると、よく「覚悟を持って」という言葉が出てきます。
中途半端に関わることで、職人さんや産地にとって“良かれと思ったこと”でもマイナスに働くことが多々あるので、「覚悟を持って関わっていく」と言っていただけるのは、産地にとっても本当にありがたいことだと思います。
でも…。
「覚悟を持って」というのは、人によって捉え方が違う。これはあくまでも僕の考え方になりますが、「覚悟を持つ」というのは、「リスクを取る」ことでもあると考えています。そう、決して、気持ちだけの話ではない。
ニッポン手仕事図鑑の話をします。
僕らはまず6年という歳月をかけて、自費で70本以上の映像を制作し、産地に「僕らの映像で、貢献できるか?」を検証してきました。後継者育成インターンシップも同様で、まず自費で4回開催し、貴重な時間を費やす職人さんにとって、大事な財源から予算を捻出する自治体にとって価値があるか? を検証してきたのです。だからこそ今、自信を持って仕事を受注できるし、価値を提供できる。
残念ながら、伝統工芸に関わりたいという人たちの多くは、リスクを取りません。
リスクを取って動いてみないと、価値を提供することはできないし、やっぱり目の前のプロジェクトに向き合う熱量も違う。事実、やる前の自分と、やったあとの自分では、「覚悟を持って」という言葉は同じように使っていたものの、覚悟のレベルがまったく違います。ここで僕が強く繰り返して言っておきたいのは、「中途半端な覚悟は結果的に産地や職人さんにとって、マイナスに働くことがある」ということ。だったら、関わらないでほしい…そう思うことは少なくありません。
「覚悟を持って」と言うのは簡単です。難しいのは、相手がリスクを取るかわりに、自分たちもリスクを取れるかどうか。何かを失う可能性とひきかえに、動き続けることができるかだと僕は考えています。持論ですが…。