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「今年の漢字」という日本の風物詩は、たった10万円の予算ではじまった

「今年の漢字」。
そのフレーズを聞くと、多くの人が頭の中に、京都の清水寺でその一文字が書かれるシーンを思い浮かべるのではないでしょうか。そう、貫主の森清範さんが筆で大きな和紙に書いていく、あのシーンです(ちなみに和紙は京都の黒谷和紙で、筆は広島県熊野の牛耳兼毫筆。墨は奈良墨が使われています)。

 

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、「今年の漢字」は『日本漢字能力検定』を普及させるためのプロモーションではじまったイベントです。
『日本漢字能力検定』を多くの人に知ってもらうにはどうすればいいか? プロモーションを担当した殿村美樹さんは苦悩しました。なぜなら、予算として与えられたのが、たったの10万円だったから…。

 

「今年の漢字」がはじまったのは、1995年。
この年は阪神大震災、地下鉄サリン事件などがあり、国民は複雑な思いを抱えながら1年を過ごした。そんな1年で、国民は何を思い、感じたのか? それを漢字で一文字で表すとしたら? を、公募してみようと考えたのです。

 

そう、でも予算は10万円。
そこで殿村さんは全国の新聞社に募集記事を掲載してほしいと、地道にアプローチをしていった。結果、全国から1万通もの応募が集まったのです。

 

さらに、その一文字を発表する場所を借りるお金もない…。
殿村さんはお寺であれば協力してくれるのでは? と考え動いてみたものの、ほとんどのお寺は墨で汚れると断った。ですが、「国民の総意として、清水寺に『今年の漢字』を掲げることで国民の気が晴れるなら、ぜひ協力します」と清水寺貫主の森さんが言ってくれたことで、企画は実現したのです。そして、それが日本の冬の風物詩となり、『日本漢字能力検定』を受験する人も急速に増えていったのです。

 

お金がないと、できないことはあります。でも、お金をかけずに、できることもある。
ニッポン手仕事図鑑も5万円ではじめた新規事業ですが、お金を理由に諦めず、そのときできることだけ目を向けて、地道に動いてきた結果、今があります。

 

10万円しかないと、諦めますか? 10万円もあると、工夫して動きますか?