もう6年以上も前のお仕事の話。
あるカリフォルニア産ワインのブランディングのお仕事を任され、中長期的な戦略や、今やるべき企画を考えていたことがありました(ほとんどワインを飲まない僕ですが…)。
オリエンテーションで聞いた話を何度も何度も咀嚼し、足りない情報はネットで調べたり、ワイン好きの知人に話を聞いたり…。いろいろと試行錯誤をしましたが、「これだ!」と言えるものが出てこなかった。「どうしてだろう?」「何が足りないんだろう?」と迷っていたとき、当時のオフィスから徒歩5分のところに百貨店があり、そこにワイン専門店が入っていることを知りました。そこで、ハッとしたわけです。
「ワインを売るための企画や戦略を考えるのに、ワインを売る現場に、自分は1度も行っていない…」
「普通、行くでしょ?」と言われたらそれまでなのですが、僕はインターネットというものに頼り切って、その5分をおろそかにしていたわけです。
専門店に行って、販売員さんにお話を聞かせてもらったことで、知識のない自分がgoogleで検索しても見つけられなかった情報が聞けて、ワイン好きの視点はもちろん、ワイン初心者の行動心理のお話、そして生産者さんのお話も聞くこともできました。たった20分程度の時間でしたが、そこで得られた情報をもとに、結果的に僕はクライアントさんの満足する企画を考えることができました。そして思ったのです。「あぁ…、アイデアにつながるインプットって、こういうことなんだな」と。
伝統工芸に関わる仕事をしていると、「私も伝統工芸に関わるお仕事をしたいと考えているのですが、まず何からはじめたらいいでしょうか?」という質問をされたり、「こういうアイデアはどうでしょうか?」という話を聞かせてもらったりします。
そのときに僕がよくお話をするのが、「現場に行っていますか? まずは現場を見るところからはじめましょう」です。
現場とはもちろん、“つくる現場”であり、“売る現場”です。それを見ずして(肌で感じずして)、伝統工芸なんて応援できない。いや、すべての産業を支援するうえで言えることだと思います。ネットで情報収集をして、自分の頭の中であれこれを思い浮かべているだけでは、下手に関わっても足を引っ張るだけ。逆に関わらないほうがいい。そのくらい、現場を見ることは大事だと今は思っています。
皆さんは現場に足を運んでいるでしょうか? 肌で何かを感じているでしょうか?
上質な企画は、上質なインプットからはじまるのです。