未来を切り拓いていく人たちには、共通点があります。
とても当たり前のことを書きますが、日々試行錯誤しているということ。そう、日々実験をして、日々失敗もしながら、未来につながる光を探し、見つけている。そんな人たちの口からは、共通して“出てくる”フレーズがあります。
「やっと、わかってきた」
この言葉です。
今日、僕は久々に長野県松本市にある松本民芸家具の工房を訪問しました。突然だったにもかかわらず、笑顔で出迎えてくれて、映像を撮った「その後」の話を、いろいろと聞かせていただきました。本当にありがたいです。
その中で僕が感銘を受けたのは、「ラッシ編みの椅子」について。
椅子の座面を「フトイ(太藺=カヤツリグサ科の植物)」を使って編み込んでいくのですが、そのフトイそのものを仕入れることが難しくなり、ここ数年、生産を中止していたそうです。でも、松本民芸家具を象徴する技術でもあるので、何とか復活させたいと、フトイの株を静岡県浜松市の農家さんから仕入れ、トラックで長野まで運び、意外と借りるのが難しい休耕田を地元で何とか借り上げて、自らでフトイの生産をはじめた。
ただ、農家でもなく、周囲にはフトイに関する知識を持っている人もいない…。
同じ田んぼで育てているのに、なぜ、一部分だけ枯れるのか? なぜ、乾燥させているうちに黄ばんでしまうのか? 次々に出てくる課題に対して、試行錯誤を繰り返しながら向き合った結果、やっと3年目を迎えたとき、家具を製造できるレベルのフトイを収穫することができたそうです。
原料のフトイ(カヤツリグサ)を
— 大牧圭吾|ニッポン手仕事図鑑 編集長 (@by_waterman) December 18, 2020
仕入れることができず
しばらく生産を中止…。
でも、何とか復活させたいと
フトイの株を浜松市で手に入れ、
試行錯誤を繰り返しながら
約3年の年月をかけて
ようやく収穫できるように。
その執念と情熱に、
そしてその技術に、
素直に感動しました。#松本民芸家具 pic.twitter.com/BESvYVX32w
「まだまだ全然なんだけど、やっと、わかってきた」
松本民芸家具の方は、そんなふうにおっしゃっていました。
未来を切り拓いていく人たちから、僕がよく耳にする言葉。間違いなく、松本民芸家具の新しい未来がはじまるのだと、僕はその言葉を聞いて、確信しました。来年の春、また取材に行くことになりそうです。
「やっと、わかってきた」
2020年、自分の口からこの言葉が、何回出てきただろう?
それは、自分自身の試行錯誤の証。来年はもっともっと、この言葉を言えるように、積極的に失敗を恐れず、動いていきたいと思います。