今、僕が所属している会社の新規事業に取り組んでいるのが、僕の前職からの後輩です。
それこそ歯を食いしばりながら、何とか年内にはその新規事業を軌道に乗せようとひたすらに、そしてがむしゃらに行動をしています。ただ、どんなにバイタリティがあっても、やっぱり人ですから、ずっと走り続けることはできない。なので、定期的に息抜きを兼ねて、飲みに行ったりしています。僕の仲のいい職人さんが「ため息は心の鉋削り」と言っていましたが、ため息をついたり、息抜きをするって、本当に大事なことなのです。
で、今週も軽く息抜きで飲みに行ったのですが、そのときに僕は彼に、ある質問をしました。
それは、10年前に福島県から上京してきて、当時僕がいた会社に彼は入社してきたのですが、そのときはまだ、英語がほとんど話せなかった。でも、その1年後、海外のメーカーとの商談の場で、通訳ができるくらいまでの英語力を身につけたのです。もちろん、英語の勉強をただただ必死にやっただけなのですが、「そのときの原動力はなんだったのか?」と、はじめて聞いてみたのです。すると彼は、こう答えました。
「恥です」
実は彼が入社した直後に行われた社内イベントで、現場のトップだった役員に対して、僕は彼の夢を伝えてあげたのです。「いつかはバイヤーになりたくて、彼は今、英語を必死に勉強している」と。すると役員はその瞬間、「今の自分の想いを、英語でプレゼンしてみて」と伝えたのですが、英語力もまだ未熟で、緊張していたこともあり、彼は全然話すことができませんでした…。そう、周囲にも人がいたので、彼は思いっきり恥をかいたのです。
実際にそれを伝えたことによって、役員はそのことを覚えていて、恥をかいたその日から1年後、大事な商談の通訳として彼を起用したのですが(今でもこの出来事をとても感謝してもらっています)、恥をかいたそのときの英語力は、全然まだまだのレベル…でした。でも、彼は1年後、重要な商談の通訳という任務を果たした。
「あのとき恥をかかなかったら、僕は1年後、あの商談の場で通訳ができていなかったと思います。今思うと、恥をかくって、大事だなって」
彼がその恥をかいたのは、確か25歳の頃。その他にも彼はどんどん恥をかいて、そして、成長をしてきた。
でも、今の同じ25歳を見ていると、極端に恥をかくことを恐れているような気がします。だから、原動力となるものがない。進んで恥をかくことを推奨するつもりは毛頭ありませんが、恥をかくことを恐れすぎたり、恥をかかないように行動をしていると、10年後もきっと、ビクビクしながら行動をしている30代になる。それはやっぱり悲しいと思うし、30代になっても新しいことにチャレンジできるほうが、僕は断然人生が面白くなると思うのです。