過去の記事でも書いた記憶があるのですが、僕がはじめて入社したフリーペーパーの制作会社は、ライターが誌面のデザインも担当するという面白い会社でした。つまり、個々がページごとに、ライター、編集者、デザイナーの一人三役を担うわけです。
そのおかげで僕は、一応グラフィックデザイナーとして、他社からオファーいただけるくらいにはデザイン力を磨くことができました。その後、デザイナーの道に進むことはありませんでしたが、でもデザインを学ばせてもらって、本当によかったと思っています。なぜなら、僕にデザインを教えてくれた人は、とにかく「文字」にこだわる人で、フォントの選び方、文字の大きさ、キャッチコピーや文章の配置、字詰め、行間などの基本を徹底的に叩き込んでくれたからです。僕はそんなに美的センスがあるわけではないのですが、「センスは後天的で、経験によってつくられる」と証明されているように、文字だけはそこそこのセンスがあると自負しております。
なぜ、今日はそんな話をしているかというと、現在審査中の『ニッポンものづくりフィルムアワード』の映像を見ていて、映像は素晴らしいのに、タイトルやキャッチコピー、テロップなどの文字の置き方で損をしていて(=マイナス評価を受けていて)、「もったいないなぁ…」と思う作品が少なくなく、文字のデザインセンスの大切さを、改めて実感したからです。
僕が文字のデザインセンスを学んできてよかったと思うのは、事実、コンペなどでそれが優位に働いた経験があるからです。企画や文章を必死に考えて、評価していただけるレベルにあるのは大前提で、「読む気にさせるデザインだった」「見ていて気持ちいい企画書だった」とプラス評価をされて、(時に企画が大したことがなくても…)受注につながったり、コンペで勝てたりしたことがあったからです。
そう、同じことを書いても、文字のデザインによって、「届き方」や「伝わり方」は違う。これは、間違いないことです。
雑誌や広告のデザインはもちろん、たくさんの企画書を見て文字のデザインセンスを学ぶと、文章による情報発信力は格段に向上します。そう、文字のデザインセンスも、「文章力のひとつ」なのです。
と、ここまで偉そうに書きましたが、僕もまだまだ勉強中の身でもあるので、これからもっともっといいデザインをたくさん見て、文字のデザインセンスを磨いていきたいと思います。みなさんもぜひ、一緒に勉強をしましょう。