僕は、とても生意気な新入社員でした。
専門学校を卒業して、何とか滑り込んだ編集プロダクションで、ろくに文章力もないのに「ライター」の肩書きをつけてもらった身分にもかかわらず、とにかく1記事1記事、全力で書いていたという自負があったからではあるのですが、自分の書いた原稿が掲載されるフリーペーパーの誌面を見て、「どうして、こんなデザインにするんだろう?」と、デザイナーに不満をぶつけることが多々ありました。本当、ろくに実力もないくせに、生意気な社員です。
そのときに、先輩ライターから言われたひと言。
「そんなに気に食わないんだったら、自分でやってみたら?」
そのとき僕はまた生意気にも、「そうかも。自分でやったほうがいいのができるかも」なんて思い、デザイナーを兼任することになりました。
で、実際にやってみると、それはそれは、“リアル”にわかってくるのです。
「あっ、なるほど、だからこういうデザインにしたのか!」ということや、「そうか、ここはこんなふうに悩むし、難しいんだな…」と。よく「相手の立場に立って考えてみなさい!」と言われ、想像力を働かせることがありますが、想像力を働かせるだけでは、見えてこないことはたくさんある。手を動かしてみたからこそ、わかることがある。
だからこそ僕は、20代の頃は特に、相手の仕事に納得できないときには、実際に手を動かしてみることをやっていました。そう、相手の気持ちや苦悩を知るために…。相手の気持ちを考えることを大事にしたいなら、想像力のない自分はまず、頭を動かすのではなく、手を動かしてみよう、と。
そして、おまけで書いておくと…。
手を動かしてみることのメリットは、相手の気持ちを理解できるようになるだけでなく、自分の新しいスキルを手にすることにもつながります。少し自慢話になってしまいますが、僕はデザイナーをやったことで、デザイナーとしてのオファーをいただいたり、その後の仕事でデザインのスキルが生きたケースが、今まで何度もありました。あのときに「やってみたら?」と言ってくれた先輩のおかげで、僕は相手の苦悩を知ることと、デザインのスキルを手にすることができたのです。そう、手を動かすことは未来の自分に、想像している以上に、たくさんの価値をもたらしてくれるのです。
———————————————————
お仕事の相談や個人的な相談、
ブログで書いてみてほしいことなど、
随時募集しております!
「プロフィールページ」からどうぞ。
———————————————————