僕は大好きな日本の、個性豊かな地域を元気にする仕事をつくりたい! と、35歳のときに前職のキャリアや報酬をすべて捨てて、現在の会社に転職をしました。
その転職から約2年後に『ニッポン手仕事図鑑』を立ち上げ、それからまもなく4年。そこそこ知られるようになった『ニッポン手仕事図鑑』を見て、周囲の人たちはこんなふうに言ってくれることがあります。
「戦略的に、そして計画的に、自分のキャリアを積み上げてきたんでしょ?」と。
その質問に対して、僕の答えは躊躇することなく、「ノー」です。
会社を辞めたとき、映像の仕事をすることになるなんて、これっぽっちも考えたこともなく、動画メディアの編集長、ローカルメディアの発行人という肩書きを持つことさえも、想像(計画)すらしていませんでした。
来年の1月7日に、成蹊大学で授業を担当させていただくのですが、昨日の打ち合わせのとき、オファーをくれた先生にそんな話をしていたら、先生はひと言、「クランボルツ教授の『計画的偶発性理論(プランドハップンスタンスセオリー)』ですね」とおっしゃったのです。
「計画的偶発…クラウドハップン…??」
先生に詳しく話を聞いてみると…。
「キャリア形成」というと、「自分のキャリアは、自分自身でひとつひとつ、計画的に積み上げて、形成していくもの」という考え方が従来のキャリア論でしたが、クランボルツ教授は「個人のキャリアの8割は、予想しない偶発的なことによって決定される」と提唱されているのです。そう、変化の激しい今の時代は、あらかじめキャリアを計画したり、計画したキャリアに固執することは「ナンセンスであり、するべきでない」と。
確かに振り返ってみると、僕自身が今、このようなキャリアを築き、楽しく仕事ができているのは計画ではなく、「キャリアの8割が“予期しない出来事”や“偶然の出会い”によって決定される」という『計画的偶発性理論』を、ほぼ無自覚に実行してきたからかもしれません。クランボルツ教授がおっしゃっているように、予期しない出来事や偶然の出会いをただ待つのでなく、アクティブに行動をして、チャンスや出会いを引き寄せる努力をしてきたと、それだけは自信を持って言えます。
そんなふうに考えてみると、確かにキャリア形成を計画的に考えるのは、すでにひと昔前の考え方なのかもしれません。クランボルツ教授の『計画的偶発性理論(プランドハップンスタンスセオリー)』はとても面白いので、もう少し勉強してみようと考えています。
というわけで今日は、クランボルツ教授が計画された偶発性を引き寄せるキャリア形成に欠かせない行動指針を引用させていただき、終わりにしたいと思います。
「好奇心」—たえず新しい学習の機会を模索し続けること
「持続性」—失敗に屈せず、努力し続けること
「楽観性」—新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること
「柔軟性」—こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること
「冒険心」—結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こすこと
(引用:その幸運は偶然ではないんです!)