自分の仕事は、自分でつくる

明日の仕事のヒントと、行動力の高め方

“苦手なフリ”をするという戦略

正直に告白すると、ずっと“苦手なフリ”をしていたことが、ふたつほどあります。

 

ひとつは、「数字」。
ビジネスをやっていると、当たり前のように「数字」というものがつきまといますが、僕はその数字が大嫌いなので、ずっと苦手なフリをしていました。苦手だと思ってもらえたら、数字に関する仕事が回ってこなくなるからです。

 

でも、大嫌いではあるのですが、実はどちらかというと得意で、学生時代はまったく勉強をしていませんでしたが、算数、数学だけは成績がよく、社会人になってからも、会計士の先生に「ビジネスの数字の勘がいい」と褒められたことがあるくらいです。でもずっと苦手なふりをして、前職の会社でも、別の人が担当してくれたり、部下が代わりにやってくれたりしました。得意と好きは別物ですから、嫌いな仕事に時間を取られたくはない。

 

そして、もうひとつは「お酒」。
お酒もずっと弱いフリをしていました。そうすると、そんなに飲め飲めとは言われない。酒豪と呼ばれる人には及びませんが、家系的にもお酒には強いはずで、過去につぶれたことも1回くらいしかなく、記憶をなくしたこともありません。でも、ずっと弱いフリをしていました。最近、気づかれてしまうことも増えてきましたが…。

 

では、なぜ飲めないふりをしていたかというと、特にビジネスの席では、お酒のイメージによる機会損失の話を幾度となく聞かされてきたからです。

 

お酒の席だからこそ、しっかりとしている人は信頼されますし、お酒の席で印象の悪い酔い方をする人は、どんなに仕事ができても、最後の最後で信頼されない。だから、与えてもらえるはずのチャンスが別の誰かのもとへ行ってしまったり、本当だったら呼んでもらえたはずの席に呼ばれなかったりする。怖いのは、本人にはそれは知らされないので、失っているものに気づけないということ…。

 

いつか誰かが「酒が人間をダメにするのでなく、ダメな人間を酒が“あぶり出す”」と言っていましたが、本当にそのとおりで、シビアに見ている人は、本当にそう見ているわけです。

 

得意と好きは別物なので、嫌いなことに時間を奪われないようにする。
本来なら与えられるべきチャンスを、逃さないようにする。

 

そのために僕は、ずっと“苦手なフリ”をするという戦略をとってきました。時間もチャンスも有限で、失いたくなかったからです。