自分の仕事は、自分でつくる

明日の仕事のヒントと、行動力の高め方

「こち亀」に学ぶ、弱者の戦い方

「こち亀」の愛称で多くの人に愛され続けた「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が、40年の歴史に幕を閉じました。今はあまり漫画を読まなくなりましたが、少年ジャンプを手にする→まずはこち亀を読む! という少年時代を過ごした自分としては、やっぱり寂しいものがあります。ここまで幅広い世代に長く愛される漫画は、この先なかなか出てこないのではないでしょうか…。

 

そんなこち亀は当然、もう「弱者」と呼ばれる存在ではありませんが、でも連載を開始したばかりの頃は、まだ弱者だったわけです。少年ジャンプは漫画家にとって最高峰の舞台で、ライバルは次から次へと出てくる。いつ蹴落とされるかもわからないという状況の中で、こち亀は勝ち続け、40年も連載を続けてきました。弱者は長い年月を経て、日本を代表する漫画になったのです。

 

なぜ、こち亀は勝ち続けられたのか? それについて、少し考えてみたいと思います。

 

まず何よりも大きいと思うのは、「40年間、1回も休載せず、続けてきた」こと。
漫画として面白いのは絶対条件ですが、休まず続けることで、読者にとっては“いつもそばにいて、当たり前の存在”になる。周囲のファンやパートナーにこの安心感を与えることは、長く仕事をしていくために欠かせないことです。

 

また、読者に与える影響だけでなく、続けることで書き手もたくさんのことが学べます。1回の面白い漫画は書けても、長く継続するのは至難の業。スポーツでも芸術でもビジネスでもそうですが、続けた人だけが得られる“モノ”があります。それはテクニックとも呼べるし、経験、勘とも呼べるものです。40年続けてきた人にしか得られないものを、作者の秋本さんは持っている。だから、強い。そう、続けることは信頼であり、他を圧倒する資産になるのです。

 

そして、ふたつ目。
「時に自分の勝ちパターンを捨て、時代に合わせ、変化してきた」こと。
両さんの立ちふるまいや、物語を盛り上げる脇役たちのポジションも、時代とともに変わってきました。両さんにこういう行動をさせれば、読者は笑ってくれる。この脇役を出しておけば、楽にストーリーがつくれる。おそらく、そういった方程式みたいなものはあったはずです。でも、それをあえて捨て、変化を求め続けた。両さんは拳銃をぶっ放さなくなり、姿を消していった脇役もいる。恐れずに変化できることもまた、時代を超えて愛される存在になるためには、不可欠な要素だと思います。

 

最後は、「こだわりを表現した」ことです。
ご存知のとおり、こち亀は特定の分野においては、専門家顔負けの知識で読者を楽しませてくれました。代表的なところで言うと、スポーツカーなどでしょうか。当然すべてのジャンルにおいて、マニアックだったわけでありませんが、ある分野には「強いこだわり」がある漫画として認知をされていました。

 

こだわる部分は、実は何でもいいと思っています。大切なのは「この人は、こだわりを持っている」と、周囲の人に認知してもらうこと。ひとつのことにこだわれる人は、仕事にもこだわれる。それを仕事のパートナーが感じることで、「きっとこの先、いい仕事をしてくれるに違いない!」と、未来の自分に期待をしてくれるようになるのです。

 

と、ダラダラと書いてしまったので、簡単にまとめます。
要するに、自分は弱者だと思っている人は、とにかく休まずにアウトプットを続け、時に今までの成功体験を捨てて、積極的に変化すること。そして、自分の得意分野、専門分野を持つことが大切だということです。その3つにこだわることで、必要不可欠な存在になれる可能性が生まれる。この掛け算が本当に大事だと、こち亀の長い歴史を振り返ってみて感じました。

 

そして、あえて最後にもうひとつ書かせていただきますが、やっぱり作者の人柄なんだろうな、と。
もちろん、お会いしたことはありませんが、ドキュメンタリー番組で拝見したり、人情味溢れる話を読むと、心のある人なんだな、と感じます。長く愛される仕事ができる人は結局、魅力的な人間だということです。