本当にありがたいことなのですが、ニッポン手仕事図鑑のプレゼント企画「編集長のおみやげ」の文章を、応募者や周囲の人に褒めていただくことがあります。ただ残念ながら、文章がうまいという褒め方ではなく…。では、何を褒めてもらっているかというと、「何か伝わってくるものがあるね」と、そこに“書き手の感情を込めたこと”を評価してくれるのです。
たとえば、かづの銘酒のお酒の紹介文は、こう書きました。
そんなに日本酒が好きではありませんでした。
でも、一気に日本酒が大好きになりました。
それは「かづの銘酒」のこのお酒と出会えたから。
地元の人の日常的な晩酌の味は、
私にとっては「感動」と表現するにふさわしい味でした。
また、淡雪こまちについては、こんなふうに書いています。
食べれば食べるほど、
毎日このお米を食べられる町の人たちに嫉妬してしまいます。
お酒もお米も、原材料や製法、使われている水など、商品の説明として書ける「事実」はたくさんあります。でも、それだけを書いても、商品の魅力はなかなか届かない…。なぜなら、頭で理解できても、心が動かないからです。
心に届くのは、書き手の体温を感じる文章です。上手い下手ではなく。それはエッセイのような原稿だけでなく、ビジネスの文章も同じだと思っています。事実や情報や提案内容をただ書くだけでなく、自分の感情をほんの少し込めてみる。そこに書き手と読み手の共感が生まれるのだと思うのです。