今はもう閉鎖されてしまったのですが、まだ20代頃(もう15~16年も前の話です…)、某大手金融系企業が運営するWEBメディアの編集者をしていたことがあります。
このWEBメディアの仕事は本当に楽しくて、編集会議もゆるく、基本的には編集者である自分のやりたい特集企画を、あれこれと自由にやらせてくれました。
たとえば、小説「いま、会いにゆきます」に感銘を受けて、どうしても作家の市川拓司さんに会いたくて、インタビュー企画をやらせてもらったり、大阪でおいしい食べ物をたらふく食べたくて、「食い倒れツアー」と題して、吉本新喜劇の島田珠代さんのオススメのお店を日帰りで10軒食べ歩きしたり(これは正直、最後は吐きそうでした…)、世界各国のビールを飲んでみたくて、「ビールワールドカップ(トーナメント方式で、ただただビールを飲み比べていくというくだらない企画でした…)」という特集をやってみたり…そう、やりたい放題でした。
今、僕は「日本全国の、自分が知らない地域へ行きたい!」を叶えるために、地方へ行く理由=地方での仕事をつくっていますが、自分のやりたいを叶えるために、仕事をつくっていくという発想は、このときの仕事で培われたのだと、今確信しました。
そんな楽しい思い出ばかりが残っているその仕事で、僕はたくさんのことを学ばせてもらいましたが、今振り返ってみて、何よりも印象に残っているのが、「サラリーマンでも、“自分の好き”を仕事にできる」ということを知った瞬間でした。
あるとき、どうしてもおいしい駅弁が食べたくて(思い起こすと、本当に自分のやりたいことばかりをやっていたな、と…)、駅弁特集をやることにしました。
そして、駅弁について学びたくて、駅弁の専門家をひらすら探した結果、駅弁愛好家で、「駅弁資料館」の館長でもある福岡健一さんという方を見つけて、いきなり連絡を入れて、インタビューをさせてもらうことにしたのです。
福岡さんのおかげで、駅弁の奥深さと面白さを学ばせてもらい、特集も魅力的な内容になったのですが、駅弁よりも心に残ったのが、福岡さんが“サラリーマンをやりながら、このサイトを運営をして、テレビやラジオに出演したり、講演をしていた”ことです。
僕は福岡さんの姿を見て、こう思ったことを鮮明に覚えています。
「右に出るものはいない! というくらい、好きなものを見つけて、極めていけば、サラリーマンだって、自分の好きを仕事にできるんだ」と。そして、「先手必勝で誰よりも先にやることと、地道に続けていくことが大事なんだ」と。
このときの強烈な印象があったからこそ、今、ニッポン手仕事図鑑をやれているのかもしれません。
15年ぶりに「駅弁資料館」を覗いてみたら、最新の駅弁情報が更新されていて、福岡さんのプロフィールページには、やっぱり「本業は土木工学系のサラリーマン」とありました。そう、サラリーマンだって、自分の好きを仕事にできる。その好きを、本物にすれば、ね。