以前務めていた会社でのことです。
入社して間もなく、その会社のプロモーションとブランディングにおいて、もっとも重要な業務をいきなり任されることになりました。前任者はなんと、現場のトップに立っていた取締役。後任は、新人の僕。言うまでもなく、結構なプレッシャーでした。
どんな企業の、どんな仕事においてもそうだと思いますが、後任者はいつだって、前任者を超えることを求められます。それはそのときの僕も同じで、前任者が取締役であろうとなんだろうと、今までの実績を超えていくことを、会社から求められました。
そんなプレッシャーのかかる状況に置かれたとき、意外に結構な割合の人が、前任者ができなかったことに目を向けたり、悪かったところを改善したりしようとします。でも、個人的には間違っていると考えています。
それらの目的を果たせたところで、会社に今まで以上の利益をもたらすような、そして周囲が評価するような成果は上げられなかったりする。もちろん、前任者を超える実績を上げることもできない。
こういうときに何よりも大事なのは、前任者がよかったところを、“徹底的に伸ばす”ことに目を向けることです。
だからそのときの僕も、取締役がやってきてよかったところを、ただひたすらに研究して、とにかく伸ばすことを考え、動いてきました。結果、取締役が上げてきた実績を、さらに伸ばすことができました。ここでしっかりと書いておきたいのは、実績は超えましたが、その人自身を超えたとは、まったく思っていないということ。
弱気なときほど、自信がないときほど、悪いところを改善することに目を向けるものですが、後任者は前任者の悪かったところを改善するのではなく、よかったところを伸ばすことを考える。前任者を超えると意気込むのではなく、前任者のよかったところを伸ばすという思考が大切だと思うのです。