昨日、群馬県庁からお招きいただき、群馬県の渋川市、前橋市を中心に発展してきた伝統工芸、「近代こけし」の後継者問題の意見交換を兼ねて、3つの工房を見学させていただきました。
ちなみに最後の2枚は、現地で一目惚れしたお茶挽き器。
近代こけしを製造する技術を活かして職人さんがつくられたもので、ふるさと納税の返礼品にもなっている人気商品です。若い人でも、急須は持っていないけど、お茶が好きな人は多い。これさえあれば、お茶っ葉を買うだけで、手軽においしいお茶が飲めます。お茶挽き器は家電でも売られていますが、そのひと手間もおいしさの一部になると思うのです。思わず衝動買いをしてしまいました。
前置きが長くなりましたが、本題です。
やっぱり現場に足を運び、職人さんの声に耳を傾けていると、この先の伝統工芸の課題も希望もたくさん見えてきます。深刻さを増す後継者問題にフォーカスをすれば、技術を継承していく時間(=育成期間)の確保ができず、八方塞がりになっている職人さんは多い…。
総務省は「地域おこし協力隊」という制度に続いて(賛否ありますが、わたしは素晴らしい制度だと思っています!)、「地域おこし企業人」という制度も世に送り出しました。その次は、「地域おこし手仕事人」を世に送り出してほしい。いかがでしょうか?
地方の伝統産業の後継者問題は、育成の最初の1~3年を乗り切れるかどうかです。ただ、その数年に渡る育成期間を投資として考えられる工房は少ないし、無報酬で「教えてください!」と言えるだけの貯蓄がある若者も少ない…。最初の1年でも国や自治体が支えてくれれば、地に足を着けて技術を繋いでいくことができます。
近代こけしを例に挙げても、生産が追いつかないほどに需要があるし、製造する機械も手に入る。周囲の職人さんたちは組織の垣根を超えて、飛び込んでくる若者を応援してくれる。足りないのは、地に足つけて育成する最初の数年を乗り切る体力なのです(情報発信や売るスキルも足りないとは思いますが…)。
国が指定する伝統工芸品には育成期間をサポートする制度もあるようですが、指定されていない多くの伝統工芸は、後継者を育成する最初の数年が乗り切れない。「それができないくらいなら、そもそも残ってはいけない…」という声も聞きますが、世の中の数多ある中小企業のほとんどが、数ヶ月の育成期間でも「少しでも短く!」「とにかく早く戦力に!」と言っていたりする。職人はどうしても数年はかかります。
人口とマーケットが縮小して、AIが進化した先に、手仕事が“昔の職業”ではなく、今の時代のリアルな選択肢になる可能性は十分にある。それぞれに個性がある地方が職人とともによりよい形で残ることで、日本は“面白い国”であり続けると思いますし、子どもたちにも選択肢を残しておいてあげたいな、と。
過保護になりすぎるのはよくありませんが、適正なサポートは必要だと思うのです。