「職人さんを支える職人さん」の多くが今、厳しい状況に置かれています。そして、結果的に「廃業」という決断をされるケースも少なくありません。
たとえば、鞄の職人さんに取材をすれば、革をくり抜く金型の職人さんがいなくなったという話を聞きます。藍染めの職人さんを取材すれば、原料をつくる職人さんが「もう5人しかいない」という話を聞き、織物の職人さんを取材すれば、糸をつくる職人さんが激減したという話を聞きます。そして今週、京都で西陣織の取材をさせていただいたのですが、そのときに「手織りのシャトルをつくっている職人さんもあとひとりで、もう86歳なんです…」という話を聞きました。
日本にはたくさんの職人さんがいますが、その職人さんを影で支えている職人さんもたくさんいます。そして今、その人たちがひとりふたりと廃業しています。
理由はさまざま。お金にならないという理由もあれば、後継者がいないという理由もあります。それが連鎖して、他の職人さんが廃業することも少なくありません。
個人的には、何とかこの負の連鎖を断ち切りたい。そのためには、どうしてもお金が必要です。
「補助金を出してもらわないと成り立たないビジネスに、そもそも未来はない」
そんな声を聞くこともあります。
ただ、急激な時代の変化に対応できず、一時的に資金的なサポートを必要としている企業は、日本全国には少なくありません。特に長年同じビジネスをやってきていると、急な方向転換は難しいものです。そこに対して支援をしていくのは、そんなに悪いことでしょうか? 私はそうは思いません。想像以上のスピードで世の中が変わり、消費者の価値観も変わりました。ついていけないのは、不可抗力でもあります。もちろん、補助金にずっと甘え続けるのはよくありませんが…。
時代のニーズに合わせていくにも、人を育てていくにも、お金がかかります。
時代の流れもあり、すべての職人さんが生き残っていくのは難しいかもしれませんが、ほんの少し金銭的な猶予があれば、うまく方向転換できる可能性は十分ある。そんな職人さんは、日本全国にきっとたくさんいます。
職人さんの技術は、日本の財産です。
目の前で廃業していくのをボーッと見ているくらいなら、足掻きたい。だから、ほんの少しでもいいから、国が予算を回してくれたらと、心から願っています。そう、無駄なところにお金を使っていないで…。