映像やWEB、グラフィック、PRの仕事をしていると、プロポーザルに参加することが少なくありません。プロポーザルというのは、複数の提案者に企画提案をしてもらい、その中でもっとも優れた提案者に仕事を依頼するというもの。そう、いわゆる「コンペ」と呼ばれるものです。そのコンペで難しいのは、「相手にとってベストな提案が、必ず勝つわけではない」ということ。
わかりやすい例を挙げます。
たとえば、自治体の映像制作の仕事。映像を制作する目的を果たせる(成果が期待できる)一番優れた企画よりも、“各課の課長がほどよく満足する企画”が勝つケースが少なくありません。事実、自治体の方がおっしゃっている話です。
同様の話が、企業のコンペでも多かったりします。
「現場が一番いいと思っている企画が、残念ながら採用されるわけじゃないんですよね…」と、担当者のそんなボヤキを聞くこともあります。
だから私は、「勝てる企画=自分たちがベストだと考える企画ではない」と感じたとき、“負けて勝つ”という選択をすることがあります。
どういうことかというと、「この人たちは、本気でうちの会社のことを考えてくれているんだな…」「次の仕事の相談は、この人たちにしよう」と思ってもららえる提案をして、未来の仕事につなげていくのです。そう、プレゼンには勝てないけど、関係者の信頼を勝ち取る提案を選ぶということです。そのようにしてつながった仕事が、実はひとつふたつではありません。正直言うと、その逆もしかりで、信頼は勝ち取れないけど、勝負に勝つ提案をすることもなくはありません…。
「負けて勝つ」という選択。
なかなか勇気がいる決断ですが、その選択をしていくことも、自分の未来の仕事のために必要だと思うのです。