ニッポン手仕事図鑑のfacebookでも投稿したのですが、個人的にこれからフォーカスをしていきたい重要なテーマのひとつが、「職人さんを支える、職人さん」です。
先月から今月にかけて、オーダーメイド靴の「HansABO」さん、鍋島緞通の「工房 無寒暑庵」さん、天然の藍で染め物をつくる「壺草苑」さん、女性用を得意とする鞄メーカー「稲葉」さんなど、職人さんとお話をする機会をいただけています。いろいろなお話を伺えるので、とても貴重な経験になっているのですが、そのときに必ずと言っていいほど、「自分たちの仕事を支えてくれる職人さん」の話になります。
たとえば、HansABOさん。
革張りから釘打ち、慣らし、釘抜きまでを行う、靴職人さんにはなくてはならない「ワニ」と呼ばれる道具があるのですが、その道具を日本でつくれる職人さんが、知る限りではもういないそうです…。
日本製と外国製のどちらの「ワニ」を持たせていただきましたが、「ああ、ここまで違うものなのか…」と、素人でも瞬間的にその差を実感できました。外国製を否定するわけではありませんが、日本製は手にしっとりと馴染み、動きも滑らか。ひと言でいうなら、とても「繊細」でした。
そして今日も、映像制作の相談をしたいとのことで、鞄メーカーの稲葉さんの工房へ伺ってきたのですが、そこでもまた「金型」をつくる職人さんという大きな存在がいることを知りました。
革を抜くためにさまざまな形の「金型」が必要なのですが、これはもちろん、他の職人さんの手仕事でつくられます。その金型をつくる職人さんも、やはりどんどん少なくなっているそうで…。
その他にも、天然の藍染めには、徳島で原料をつくる藍師の存在が欠かせず、鍋島緞通には、京都で高品質の糸をつくる職人さんの存在が欠かせません。でも、そんな職人さんを支える職人さんが、ひとりまたひとりと、いなくなっているのが現実なのです…。
これは本当に恐ろしいことで、このまま放置しておくと、日本にとって取り返しのつかない大きな損失になります。だからもっと、たくさんの人に「職人さんを支える、職人さん」の存在に気づいてほしいな、と。
素晴らしい仕事をしている人の影には、素晴らしい仕事を支えている“大きな存在”があるものです。言い換えると、支えてくれる人がいなければ、どんなに素晴らしい技術を持った職人さんも、仕事ができなくなってしまうのです。
職人さんもアーティストでも、一番前にいる人は見えやすい。でもその影には、素晴らしい技術や経験で支えている人がいるのです。