自分の仕事は、自分でつくる

明日の仕事のヒントと、行動力の高め方

「適正価格」を知ることが大事

秋田県鹿角市は少しずつですが、移住者が増えているそうです。間違っていたら申し訳ないのですが、今年度の市が掲げた移住者数の目標を達成したとか。私の聞き間違えでなければ、素晴らしいことです。
鹿角は食べ物もおいしいし、温泉も気持ちいいし、人も温かいし、風景も美しいし…何も言うことはない! と言いたいところですが、知れば知るほど、課題が見えてくるのも事実です。

 

実は今回の滞在で、悲しいお知らせをいくつか耳にしました。
そのひとつが、鹿角で6代も続く老舗の工房が廃業するということ。素晴らしい手仕事をされていたので、ニッポン手仕事図鑑としても本当に悲しいお知らせです…。この手仕事が、この町から消えてしまう。この損失の大きさに気づいている人が何人いるのか…。いや、誰も知らないうちに、ひっそりとのれんを降ろしてしまうのかもしれません…。本当、悲しい。

 

そしてもうひとつの、悲しいお知らせ。
連れて行ってもらった気のいいママさんがやっている小さなスナックが、今月末でお店を締めるというお知らせ。自分の母親と同じくらいの年齢のママさんと、そのお母さんが一緒にやっているお店で、来店している人もいわゆる高齢者です。そんな地域の人たちの心の拠り所になっている場所がなくなってしまうのも、地域としては大きな損失だと思うのです。

 

「さすがにこれ以上の赤字はね…」と絞りだすように出てきたひと言。そして、笑っているけど、悲しそうな目で思い出話を聞かせてくれているママさんの顔を思い出すと、今でも泣けてきます。空っぽになったボトルキープのウイスキーの瓶を、愛おしげに眺めていました。簡単には捨てられないほどに、思い出がつまっているに違いありません。鹿角弁講座も、忘れられない思い出になりました。

 

さて、少し感傷的になってしまいましたが…。
なくなってほしくはありませんが、職人さんもママさんも、いろいろと考えて決断したこと。外野がウジウジ言っていても仕方がありません。ただ、それで終わりにはしたくない。この悲しい出来事を、未来につなげていきたい。

 

だから、ひと言だけ残しておきます。
「その価格は、適正だったのか?」

 

職人さんの商品も、スナックの会計も、正直びっくりするくらいに安かった。これには驚きました。
確かにお店の家賃も安いかもしれない。収入がそれほど多くなくても生活ができたのかもしれない。鹿角というマーケットを考えたときに、この価格でないと商品は売れず、お客さんが来なかったのかもしれない。

 

でも、安い。明らかに、適正価格ではない。
適正価格で勝負していれば、もう少し大好きな仕事を続けられたのかもしれません。

 

これは地方での仕事だけではありませんが、目の前にいるお客さんの求める価格に合わせてしまうと、ビジネスはうまく行きません。大切なのは、適正な価値を提供して、適正な料金をいただくこと。

 

料金を下げる努力ではなく、価値を高めていく努力を知れば、地方はもっとよくなると思います。でも今は、それを知る術がない。だから、疲弊していくしかない。そんな気がします。

 

価格を決めるのは、その土地のマーケットではありません。何が提供できるか? 自分が作り出すその価値です。もちろん、簡単なことではありません。だからこそ、価値のつくり方をみんなで情報共有していくことが大切なのです。これから地域を守り、残していくために…。